介護が必要になったら |
目次
8.要介護で利用できるサービス
--ケアマネージャーの選び方やケアプランについて
夜間対応の訪問看護も
9.追加になった選択的サービス
10.施設に入所して受けるサービス
--特別養護老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅など
11.高齢者対象の一般保険サービス
--家のバリアフリー化、福祉用具のレンタル
8.要介護で利用できるサービス
ケアマネジャーを決める
要介護1以上になると、利用できるサービスの枠も大きく広がります。そして、ケアマネジャーがケアアプランを立て、それに従って様々なサービスを受けることになります。ケアマネジャーは自分で探すことも可能ですし、高齢者総合相談センターに紹介してもらうこともできます。十分に受けたいサービスについて話し、ケアプランを立ててもらうことが必要です。また、相性の良し悪しもありますので、自分の納得できる人を選ぶことが大切です。
良いケアマネジャーに担当してもらうことは、「快護」サービスを受ける必須の条件です。
良いケアマネを選ぶには
良いケアマネジャーの条件とは以下のようなものだそうです。
□話をよく聞き、「利用者の立場」で最良の方法を考える。
□サービス情報を広く持っている
□気軽に足を運ぶ
□対応が早い
□誠実な苦情処理
□自分の属する組織のサービスを強要しない
□相性がいい
このうち、最低でも5つは該当する人を選ぶのがコツだそうです。
(出所)「今すぐ役立つ快護シリーズ ⑪第3版 介護保険 ――上手に使うカンどころ」おち とよこ著 創元社(2012年)
医療的な配慮が必要な場合には、看護師資格を持つケアマネジャーや訪問看護ステーションに併設された事業所のケアマネジャーを選ぶことが多いそうです。
ケアプランの作成
ケアプランというのは一人一人違う、いわばオーダーメードの計画です。ですから、おまかせではなくて、自分の希望をはっきり伝えることが肝心です。ヘルパーさんをどこまで頼むか、通所のサービスは、ショートステイは、など細かく希望します。もちろん、負担がどうなるか、まだサービスを受ける枠の余裕があるかなども十分に聞いておくことが肝心です。できたケアプランを元にサービスを契約するので、しっかり確認が必要です。ただ、最初から最良になるとは限りませんから、必要なら手直しをしてもらうこともできます。
サービス担当者会議
ケアマネは利用者のニーズを聞き取って、仮のケアプランを作成し、そのプランに必要なサービス事業者の選定や契約をしてくれます。その上で、ケアマネはサービス担当者会議を開くことを義務づけられています。多くのケースではサービスを受ける人の家で開かれるようです。もし、往診などを受けている場合には、医師の意見も反映するために、往診日に合わせることも多いようです。サービス提供事業者、医師、ケアマネが一緒に顔を合わせて、仮のケアプランを元にサービス全体像を、より本人の希望通りになるように相互に最終調整をします。サービス担当者会議は様々な人のスケジュール調整や協力も必要となりますし、受益者の要望を実現していくので、ケアマネの手腕が発揮されるとも言われています。
サービス事業者と契約
実際にサービスを提供してくれるのは事業者になります。これも質はまちまちです。すでに利用している近所の友人に評判を聞いてみるなど、情報収集も大事です。ただ、これも空き状況などがあって、必ずしも希望通りにならないかもしれません。また、事業者によっては提供するサービスの組み合わせが異なる場合がありますので、その点もチェックが必要です。
介護は保険料や税金を使って運営される公的制度ですので、基本的に契約そして書類の世界です。契約書や重要事項説明書は難しいですが、家族やサポートしてくれる人の助けを借りて、しっかり把握することが必要になります。
施設に入る場合には、施設にいるケアマネにプランを作ってもらうことになります。
訪問介護や訪問看護・通所利用が充実
要介護になりますと、支給限度額がぐっと増えますので、訪問サービスやデイサービス、ショートステイなどを利用できる回数が増えます。と同時に、様々な疾患が生じているケースが多くなりますので、訪問看護についても、健康状態や病気の状態などに従って、多くの医療上のケアが受けられるようになります。血圧や脈拍、体温の測定、病状のチェック、排泄や入浴の介助、清拭、洗髪など、さらに在宅酸素、カテーテルやドレーンチューブの管理、褥瘡(じょくそう)の処理、リハビリも含まれます。最後は在宅の看取りまで行うことが可能になります。特別養護老人ホームの不足が予想される中、在宅で最期を迎える方も増えるために、介護、看護ともそれに対応できるようにと考えられています。
医療か介護かの選択も生じる
訪問看護に関しては、末期がんや難病患者など特定の場合には医療保険の適用を受けることができますので、これもケアマネと相談することになります。
また、デイケアという通所リハビリに通うこともできます。通所リハビリ計画に基づいて理学療法、作業療法、言語聴覚療法などのリハビリをします。デイサービスに比べると、目的がはっきりした内容になります。
同じことがショートステイにも言えます。状態に合わせて、福祉系か医療系を選ぶことになります。予約が入らないこともありますので、毎月、定期的に利用するなどして、家族が介護疲れにならないように、計画的に利用することが肝心です。ただ、食事代と滞在費は保健外になります。日常生活品は持参すれば費用はかかりません。
夜間対応の訪問介護
訪問・通所サービスを使いながら、自宅で介護を受ける場合に、困るのは夜間の対応でしょう。家族が常に夜間の介護を担うのは大変ですし、一人暮らしでは対応ができません。そこで頼りになるのが、夜間の訪問介護です。夜間とは22時から翌朝6時までのサービスです。定期巡回や通報システムにより、夜間の訪問介護が受けられます。専用端末から通報すると、オペレーションセンターとつながり、巡回中のスタッフが訪問してくれます。また、24時間対応型の訪問介護と訪問看護を組み合わせたサービスもあります。この一体型のサービスですと、定期巡回と臨時対応で、自宅で介護と看護を受けることができます。要介護5の場合では、1ヶ月で33563円の負担がかかります。
これらのサービスはいずれも要介護の人だけが受けられるサービスとなります。自宅でできるだけ長く安心して過ごせるように、こうしたサービスが開始されました。
9.追加になった選択的介護サービス
2018年8月から、選択的介護という制度が豊島区で始まりました。これは2018年8月1日から2021年3月31日までを期間としたモデル事業です。期間限定で試しにやってみようという位置づけです。
これまで要介護者はヘルパーさんの訪問介護サービスとして、
①身体介護――食事や服薬、さらには排泄や入浴の介助など
②生活援助――食事の準備や調理、掃除、洗濯、日常必要な買い物や薬の受け取りなど
を介護保険の枠内で、利用することができました。ですから、本人負担はコストの1~3割ですみます。
選択的介護は、同じヘルパーさんに、介護保険では認められていなかったさまざまなサービスを、保健外でお願いできるようにするものです。
新たにヘルパーさんに頼めるようになったサービス
内容としては
①利用者以外の人のための家事労働
②家全体の掃除
③家具の移動や電気器具の修理
④日用品以外のお酒などの買い物
⑤ペットの世話
⑥大掃除(普段やらない掃除)
⑦花木の水やりや庭の手入れ
⑧書類の確認など
⑨WEBカメラやセンサーによる見守り
などがあります。
保健外で費用は10割負担
これは介護保険の対象外ですから、利用者の負担は10割と介護保健サービスの3倍強~10倍のコストを負担することになります。リボンサービスやシルバー人材センターにこれらの仕事を頼んだときに比べると、料金も高くなり、1時間あたり2000円から3600円になります。ですから、通常のヘルパー業務のついでに15分とか30分頼む形になるでしょう。ただ、介護保険の対象となる時間と、ならない選択的介護を頼む時間を混同しないように管理する必要があります。
契約は月ごとに1時間から3時間のパックとして契約する形になります。料金が依頼する事業者によって異なることにも注意が必要です。
これまで簡単な仕事は、専門の資格を持った訪問介護員(ホームヘルパー)ではなく、できるだけ他の人にやってもらうような体制が作られてきました。この選択的介護はそれとは反対に、介護の資格を持ったヘルパーさんに、簡単な仕事もお願いできるという仕組みです。
これによってヘルパーさんは、簡単な仕事を追加的にできることになるので、それによって収入が増えるのであれば助かります。ホームヘルパーになりたいと思ってくれる人も増えるかもしれません。しかし、利用者側からみれば、選択的介護を使うと負担が大きく増えるので、お金にゆとりのある人しか利用できないサービスになりかねません。
このサービスを利用するかどうか、利用するとしたらどう使うのかなど、ケアマネとよく相談することが欠かせないようです。
10.施設に入所して受けるサービス
特別養護老人ホーム
自宅での生活が難しくなった高齢者の方、具体的には要介護3~5の方は特別養護老人ホームに入居することができます。特例として、認知症や知的・精神障がいがあり、日常生活に支障がある、家族の虐待などのケースでは要介護1~2でも入所が認められます。しかし、文字通り狭き門であるのが実情です。大和総研の研究では、2025年までに新たな特別養護老人ホームが建たなければ、要介護3以上で施設に入れる人は4割を切り、14万人近い人が在宅での介護を余儀なくされるそうです。
豊島区には現在10カ所の特養があります。西部圏域では千川の杜があります。108床のベッドを持つ新しい施設です。また、リハビリを中心とした老人保健施設としては熊野町交差点の近くにえびすの郷があります。
特別養護老人ホームでは介護は施設が24時間提供してくれるので、安心です。医療については医師の定期的な検診などで対処することになります。病気になれば、契約している医師や看護師が往診してくれたり、緊急に入院することなどもできますので、心配は大きく減ることになります。
負担の軽減措置もある
食費や住居費については基本は自己負担となりますが、低所得者に対しては、「特定入所者介護サービス費(負担限度額認定)」という制度があります。これを利用するには区への申請が必要です。限度額には細かい区分がありますし、認定の要件もどんどん厳しくなっているようです。ただ、認定されれば、負担は介護保険の自己負担部分+負担限度額+介護保険の対象とならない雑費や教養娯楽費となります。
民間の施設への入所
民間の介護付き有料老人ホームに入居する方もあるでしょう。中には、料金は高いですが、看護師が24時間常駐している看護職員配置型もあります。
東京都は「あんしん なっとく 有料老人ホームの選び方」というパンフレットを作成しており、ここで有料老人ホームの種類やその違い、注意点などを懇切丁寧に説明してくれています。ただ、残念ながらお役所の作るパンフらしく、網羅的ではあるものの、ここまでの検討ができる人はほとんどいないでしょう。
入居一時金に注意
ポイントとしては入居一時金を納めたが、思いがけず早期に退去する場合に、入居金の大半が戻ってこないなどの問題が生じやすいことです。入院したときのホームへの支払いなどについても、よく検討することがトラブルを避ける上では必要です。都のパンフのように十分な検討が必要なことは言うまでもありません。また、入居金を月額の支払いに上乗せしたタイプもあります。
残念なことですが、最近では有料老人ホームが倒産するという可能性も考えなければなりません。空いているから、急いでいるのでという理由で、拙速で決めることだけは避ける必要があります。運営している事業体の評判や規模などの吟味も重要です。会計不正などがあれば、表面上の数字では判断できません。信用のおける事業体かどうか、しっかりチェックしましょう。
体験入所で雰囲気など吟味
個人的な経験から言うと、老人ホーム選びではこうした金銭面と同時に、体験入所などでよく雰囲気を吟味することが必要のように思います。新しいところは施設も綺麗で、入りやすいというメリットがありますが、スタッフがすべて新しく、運営が安定するのに時間がかかります。入居者も初めての人が多いので、そこでコミュニティができ、様々な入居者の活動が始まるまでに時間がかかります。
反対に、既存の有料老人ホームはすでにコミュニティができているし、スタッフも経験があるので、様々な活動が始まっています。うまく溶け込めるかどうかが問われることになります。また、スタッフの充実度も吟味ができれば、それに越したことはありません。普段は十分なスタッフがいても、休みの日などはどうしても手薄になりがちで、そうした日のサービスが極端に低下することがないわけではありません。しかし、ここまでチェックするのはなかなか難しいのが実情でしょう。
こうした施設では体験入所することができますので、1週間ぐらい体験入所してみるのもお勧めです。
外部の介護サービスを利用する施設
こうした自前の介護サービスを提供する施設のほかに、ケアハウスやサービス付き高齢者向け住宅(サ高住)もあります。これらは食事や洗濯、掃除、緊急時対応など生活支援は受けられますが、介護が必要になった時には外部のサービスを利用します。(介護型のケアハウスでは入浴や排泄などの補助が受けられ、介護サービスを施設内部で受けられます)。
サービス付き高齢者向け住宅
サ高住は主に60歳以上の高齢者を対象にしたもので、多くは賃貸契約になっているそうです。昼間は生活相談員がいて、入居者の安否確認や生活支援のサービスを提供してくれます。ただ、夜間は緊急通報システムなどの対応になります。また、夜間には外から入ることができなくなるようです。
高齢であることを理由に入居を拒否されることがない点で、高齢者には助かります。ただ、重度の介護状態になったりした時の対応には注意が必要です。家賃は普通の賃貸住宅に比べると高いようですが、生活支援がついていますし、また、バリアフリーになっている点も暮らしやすいと言えます。ここも集合住宅であり、ロビーなどで一緒に楽しむ機会も多いので、自治組織や雰囲気が大事になるといえそうです。
11.高齢者対象の一般サービス
一般保健福祉サービス
高齢者を対象とした公的サービスは他にも沢山あります。ただし、様々な対象要件、所得制限などがあり、とても条件が複雑で注意が必要です。手続きの簡単なものも煩雑なものもあります。それでも一応リストアップしてみると、
1.紙おむつ支給
2.おむつ購入費等助成
入院時の助成です。入院すると病院によっては指定の紙おむつを使用することを
求める場合があることに対応しています。
3.出張理容サービス
4.寝具類の洗濯乾燥サービス
5.配食サービス
6.徘徊高齢者位置情報サービス
7.自立支援住宅改修費助成
8.火災安全システム
9.緊急通報システム
10.車いすの貸し出し
11.福祉電話の貸し出し
12.敬老入浴
13.浴場ミニデイサービス(湯友サロン)
説明は以下を参照してください。
(出所)豊島区「介護保険サービス 利用の手引き 2017」
家のバリアフリー化
高齢になり、家の中での移動などが不自由になると、家のバリアフリー化が必要になります。その際には、介護保険、あるいは区から助成金をもらうことができます。上にあげたリストの「7.自立支援住宅改修費助成」がそれです。
これを知らずにバリアフリーの工事をしてしまうと、後から申請しようとしてもできません。この制度を認識して、必ず事前に申請することが重要です。
この助成金の対象となる住宅改修の範囲は次のようなものです。
・手すりの取り付け
・段差の解消
・滑りの防止及び移動の円滑化等のための床材又は通路面の材料の変更
・引き戸等への扉の取替え
・洋式便器等への便器の取替え
・その他これらの各工事に付帯して必要な工事
助成金は20万円ですが、その内から10~30%が差し引かれ、自己負担となります。
手続きとしては、介護認定で要支援・要介護を受けた人はケアマネに相談します。介護保険の適用を受けられなかった人でも、区の助成が受けられます。高齢者総合相談センターに相談してみてください。
また、一度バリアフリー化で助成を受けても、要介護度が3度以上上がった場合には再度申請が可能です。その意味では、要介護度が低い内にそのとき必要な工事を先に実施しておけば、もう一度助成を受けられる可能性がありそうです。
福祉用具のレンタル
ベッドや車いすなど、生活をしやすくするための介護用品は、介護保険を使ってレンタルすることができます。以下のようなものが該当します。
<要支援・要介護1まで>
・歩行補助つえ
・歩行器
・スロープ など
<要介護2以上>
・車いす(電動や付属品を含む)
・介護ベッド、電動ベッド
・体位変換器
・認知症老人徘徊感知機器
・車いす昇降機
・浴室用リフト など
これらのレンタルについては、1ヶ月以上入院する場合などには利用できないので、事業所に連絡する必要があります。また、レンタルではなく、腰掛け便座、入浴補助用具などは1割~3割の負担で購入することができます。
住み替え家賃の助成
豊島区内の民間賃貸住宅に住んでいる人で、取り壊し等で転居が必要になった場合、住み替え後の家賃の一部が助成される制度があります。60歳以上の一人暮らしまたは、60歳以上の高齢者のみの世帯で以下の条件に当てはまる人は、検討する価値があります。
1.区内の住宅に2年以上住んでいる
2.区内の民間住宅に転居する
3.生活保護を受けていない
4.世帯の前年の所得合計が、月額158,000円以下である(特別区分に該当する場合は214,000円以下)
助成金額は転居後の家賃と基準家賃との差額の一部で、上限が月額1万5000円、助成期間は5年間です。
詳しくは区のホームページを見て下さい。
http://www.city.toshima.lg.jp/308/machizukuri/sumai/kekaku/yushi/002157.html
なおこの制度は障害者世帯、18歳未満の子どもを養育している人及び低所得の人にも適用されるそうです。
このほか、高齢者入居支援、あんしん居住制度など、高齢者向けの居住支援に関わる制度があります。こちらをご覧下さい。
(参考資料)
「見て分かる介護保険サービス 上手な使い方教えます(2018年制度改正報酬改定対応!」桜井想子・勇気康博著 技術評論社
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